前回の記事では、最高評価を取り続ける人たちは、空いた時間を新しい仕事で埋めず、予定外を吸収する「余白」を先に確保していることを知りました。
(※前回の記事はこちら→『仕事が早い人ほど予定を詰め込まない。最高評価者は「余白」を先に確保していた。』)
私はそれから、予定表に30分の「調整時間」を残すようになりました。
- 急な電話が入れば対応する。
- 予定が遅れれば、そこで元へ戻す。
たった30分でしたが、1日の予定は以前より崩れにくくなりました。
「ようやく、仕事を安定して回せるようになった」
そう思っていたのです。
しかし……。
予定どおり仕事は終わっている。
それなのに、なぜか本当に進めたい仕事は、前へ進んでいない気がしました。
終わった仕事は増えた。それなのに、何も進んでいなかった
ある日の朝。
パソコンを開くと、受信箱には新しいメール。
机の上には、確認を待つ資料。
予定表には、会議と報告物の締切が並んでいました。
私はコーヒーを一口飲み、目についた仕事から取りかかりました。
- メールを返信する。
- 頼まれた数字を確認する。
- 資料を修正する。
一つ終わるたび、予定表へチェックをつけていきます。
「今日は、いつもよりかなり進んでいるな」
そんな達成感がありました。
- 午後になっても、メールが届けばすぐに返す。
- 誰かに頼まれれば、今の仕事を止めて対応する。
- 短時間で終わりそうなものは、先に片づける。
私は朝から、ずっと動き続けていました。
それなのに、ふと時計を見ると、もう夕方でした。
夕方のひと言で、今日一日が空っぽになった…。
上司が私の席の横で足を止めました。
「そういえば、例の改善案、今週中に形になりそう?」
マウスを動かしていた指が、ぴたりと止まりました。
数週間前から、重要だと分かっていた仕事です。
しかし、目の前の細かな仕事を処理することばかりに気を取られ、まとまった時間を一度も取れていませんでした。
「すみません。細かな対応が重なっていて、まだ6割くらいです」
上司は、
「分かった。できるところまで進めておいて」
と言い、席を離れました。
周囲から、椅子を引く音が聞こえ始めます。
予定表を見ると、いくつものチェックがついていました。
- メールも返した。
- 資料も直した。
- 頼まれた仕事も終わらせた。
今日一日、決してサボってはいません。
それなのに、本当に進めるべき仕事は、朝とほとんど変わらない状態で画面に残っていました。
次に来た仕事を処理する。
終わったら、また次へ進む。
私は仕事を進めているのではなく、目の前に現れたものへ反応し続けていただけなのかもしれません。
「今日、俺は何の仕事を進めたんだろう……」
最高評価者は、朝から仕事を始めてはいなかった。
翌朝。
最高評価者の机の上をふと見ると、何枚もの付箋と資料が並んでいました。
- 今週の締切。
- 途中まで進んでいる仕事。
- これから始める仕事。
しかし、本人はまだパソコンで作業を始めていません。
私は不思議に思い、聞きました。
「朝から何を見ているんですか?」
最高評価者は、机の上を指さしました。
「今日何をやるか決める前に、今ある仕事を全部見て確認しているんです」
「でも、どれもやらないといけない仕事ですよね?」
最高評価者は、一枚の付箋を指しました。
「これは、今日やらなくても困らない仕事」
次の一枚。
「これは、私が全部やらなくてもいい。みんなで手分けして進める仕事」
そして、中央に置かれた資料を指しました。
「でも、これは先に時間を取らないと、また後回しになる仕事です」
私は昨日の自分を思い出しました。
目についた仕事。
頼まれた仕事。
すぐに終わりそうな仕事。
私は、それらへ順番に反応していました。
でも、最高評価者は違いました。
何の仕事に時間を使うかを決めるまで、仕事を始めていなかったのです。
目の前から片づけるほど、大事な仕事が遠ざかっていた
私は、仕事ができる人とは、処理速度が速い人だと思っていました。
- 頼まれた仕事を早く終わらせる。
- メールへすぐ返信する。
- 目の前の仕事を次々と片づける。
でも、どれだけ速く処理しても、成果につながらない仕事へ時間を使っていれば、重要な仕事は進みません。
最高評価者は、仕事が来た順番で時間を使っていませんでした。
- 成果へ直結する仕事。
- 誰かに相談できる仕事。
- 後でよい仕事。
- 今はやらなくても影響の少ない仕事。
これらを一度すべて並べて、
「今日は何を終わらせるか」
ではなく、
「今日は何へ時間を使うか」
を決めていたのです。
優先順位を決めるだけではありません。
限られた一日の時間を、どの仕事へ配分するのかまで、先に決めていました。
最高評価者は、目の前の仕事を速く処理していたのではありません。
仕事に手をつける前に、抱えている仕事全体を見渡し、自分の時間をどこへ使うのかを先に設計していたのです。
机の上に仕事を並べた瞬間、やらなくてよい仕事が見えた!
その日の夕方。
私は、自分が抱えている仕事をノートへすべて書き出しました。
- メールの返信。
- 資料の修正。
- 数字の確認。
- 会議の準備。
- 何度も後回しにしていた改善案。
頭の中にあるときは、すべて急いでやるべき仕事に見えていました。
しかし、並べてみると、まったく違いました。
細かな確認は、午後でもいい。
急ぎだと思っていた資料修正は、確認すると締切が来週でした。
自分で抱えていた作業の一部は、関係者へ相談できます。
そして改善案は、先に時間を取らなければ、来週も進みません。
翌朝。
私はメールを開く前に、午前中の1時間を改善案へ使いました。
途中で、受信箱が何度か光ります。
少し気になりましたが、画面へ視線を戻しました。
昨日まで頭の片隅にしかなかった改善案が、1行ずつ形になっていきます。
数日後、途中まで完成した資料を上司へ見せました。
「お、ここまで考えてくれたんだ」
上司はページをめくりながら続けます。
「これなら、次の会議で提案できそうだ」
その言葉を聞いて、私はようやく分かりました。
仕事が速くなったわけではありません。
やる仕事を増やしたわけでもありません。
何に時間を使うのかを、自分で決めただけでした。
今日から実践!目の前の仕事を離れて、全体を見渡す。
今抱えている仕事を、一度すべて書き出してみてください。
紙でもノートでも構いません。
きれいに分類する必要もありません。
そして、すべてを眺めながら、一つだけ決めてください。
「今週、自分の時間を最も使うべき仕事はどれか?」
それだけで、
- 今すぐやらなくてよい仕事。
- 誰かへ確認した方がよい仕事。
- 惰性で続けている仕事。
- 本当は、先に時間を取るべき仕事。
これらが見え始めます。
目の前に来たものへ反応するのをやめ、一度すべてを並べてみる。
やるべきことを増やすのではありません。
何に時間を使うかを、自分で選ぶのです。
まずは、今週もっとも時間を使う仕事を一つだけ決めてみてください。
それだけで、同じ一日でも、進む方向が変わり始めます。
次回予告:仕事を設計した。それでも、予定は思いどおりに動かなかった…。
仕事全体を見るようになってから、進みが悪かった仕事が、少しずつ形になり始めました。
「これなら、もっと成果を伸ばせるはずだ」
そんな手応えも感じていました。
しかし……。
仕事全体を並べ、進める順番を決めても、現実はそのとおりには動きません。
- 関係者の予定が変わる。
- 必要な資料が届かない。
- 思った以上に時間がかかる。
ある日、私は朝につくった予定表を見つめていました。
赤い修正が、いくつも入っています。
「全体は見えるようになった。でも、どうして計画どおりに進まないんだろう……」
仕事を設計することと、その設計を現実の中で動かすことは、同じではありませんでした。
私はまた、新しい壁の前に立つことになります。
次回は、
『計画を立てただけでは仕事は進まない。最高評価者は「途中」で現在地を確認していた』
をお届けします。


コメント