前回の記事では、最高評価を取り続ける人たちは、ただ周囲へ仕事をお願いしているのではなく、相手が動きやすい状態をつくっていることを知りました。
(※前回の記事はこちら→『一人で頑張るほど評価は伸びない。最高評価者は「みんなが成果を出せる仕組み」をつくっていた』)
私はそれから、すべてを一人で抱え込むのを少しずつやめました。
- お願いする範囲を決める。
- 必要な資料をそろえる。
- 目的と期限を伝える。
このように周囲の力を借りられるようになると、以前より仕事が早く進むようになりました。
ある日の午後、パソコンの予定表を見ると、30分の空きができていました。
私はその白い枠を見つめながら思いました。
「ここに、もう一つ仕事を入れられるな。」
せっかく生まれた新しい時間でした。
しかし私は、その時間を緊急用に確保しておくのではなく、すぐに別の仕事で埋めてしまったのです。
白い30分を見つけた瞬間、私はまた仕事を入れた。
翌朝。
私は始業前に、その日の予定表を開きました。
午前中は資料作成。
その後は確認作業。
昼休みを挟み、午後は関係部署への連絡と打ち合わせ。
昨日空いていた30分にも、新しい仕事を入れてあります。
予定表には、白い場所がほとんどありませんでした。
私は画面を見ながら、少し満足していました。
「今日は無駄なく働けそうだ。」
予定が埋まっていると、仕事をしている実感がありました。
しかし、空いている時間があると、
「もっとできるのではないか。」
「時間を無駄にしているのではないか。」
と不安になります。
だから私は、隙間を見つけるたびに仕事を入れていました。
朝の時点では、完璧な一日の予定に見えました。
このとおり進めば、退勤時間までにすべて終わるはずでした。
一本の電話が、完璧な一日を壊し始めた。
午前10時を少し過ぎた頃、机の電話が鳴りました。
関係部署からの確認でした。
「少しだけ、いいですか。」
最初は、数分で終わると思っていました。
しかし話を聞いていくと、過去の資料を確認する必要が出てきました。
ファイルを開き、数字を探し、経緯を説明します。
電話を切ったときには、20分以上が過ぎていました。
私は時計を見て、すぐに作業へ戻りました。
ところが今度は、作成中の資料に数字の間違いが見つかります。
「なんで今なんだよ……。」
小さくため息をし、入力し直しました。
その直後、隣の同僚から声をかけられます。
「この件、少し相談してもいいですか?」
一瞬だけ、返事が遅れました。
本当なら、手を止めて話を聞くべきです。
しかし、予定はすでに遅れ始めています。
「ごめん。あとでもいい?」
そう答えた自分の声が、少し冷たく聞こえました。
余裕を失った私は、学んだことまで手放しかけた。
昼前になると、後ろの予定が少しずつずれ始めました。
- 資料作成が終わらない。
- 確認作業にも入れない。
- 午後の連絡準備もできていない。
私は昼休みを少し削り、画面を見ながらおにぎりを口へ運びました。
味はほとんど分かりませんでした。
そして、マウスを握る手に力が入ります。
時計を見る回数だけが増えていきました。
「相談している時間はない。」
「報告は全部終わってからでいい。」
「人へ説明するより、自分で処理した方が早い。」
気付けば私は、これまでの記事で学んだはずの行動をまた手放しかけていました。
- 問題が起きる前に相談すること。
- 状況と次の行動まで報告すること。
一人で抱え込まず、周囲が動きやすい状態をつくること。
分かっているはずなのに、余裕がなくなると実行できません。
退勤時間が近づき、私はスマートフォンの画面を見ました。
家族の顔が浮かびます。
「今日も間に合わないかもしれない。」
予定を詰めたことで成果が増えると思っていました。
しかし実際には、一つの予定外で全体が崩れ、仕事の質まで落ち始めていたのです。
最高評価者の予定表には、不自然な空白があった。
その日の午後。
最高評価者へ確認したいことがあり、私はその人の席へ向かいました。
パソコンの横には、一日の予定が書かれた手帳が開かれています。
何気なく目に入った予定表を見て、私は少し驚きました。
予定と予定の間が空いていたのです。
午前中にも30分。
午後にも30分。
私は心の中で思いました。
「あれ?意外と仕事が少ないのかな。」
そのとき、上司から急な声がかかりました。
「悪いけど、この資料を今日中に確認してもらえる?」
最高評価者は時計を見て答えました。
「大丈夫です。午後の調整時間で確認します。」
10分後、別の同僚も相談へ来ました。
その人は作業の手を止め、椅子を相手の方へ向けます。
「どうしました?」
慌てる様子はありません。
相談が終わると、遅れた仕事を空いている時間へ移し、その日の予定を整え直しました。
そして退勤時間になると、いつもどおり席を立ちました。
私はその背中を見ながら、ようやく気付きました。
仕事が少なかったのではありません。
予定外のことが起きても崩れないように、最初から時間を空けていたのです。
その空白は、暇ではなく“崩れない仕組み”だった。
仕事には、予定外のことが必ず起こります。
- 急な業務の電話。
- 上司からの確認。
- 同僚からの相談。
- 資料の修正。
- 予定どおりに進まない仕事。
以前の私は、予定外のことが起きない前提で、一日の予定を埋めていました。
だから何か一つ入るだけで、後ろの仕事がすべてずれていきました。
しかし、最高評価者は違いました。
予定外の仕事や遅れを吸収できる時間を、最初から確保していたのです。
その時間は、仕事をサボるための時間ではありません。
- 遅れを戻す。
- 急な仕事へ対応する。
- 資料を見直す。
- 誰かの相談を聞く。
- 必要なら、早めに上司へ確認する。
つまり、重要な仕事を止めないための時間でした。
余白は、仕事が早く終わった人へのご褒美ではありません。
仕事を予定どおり進めるために、先に守っておく時間だったのです。
明日の予定に、仕事ではない30分を入れてみる。
明日の予定を立てるときは、30分だけ仕事の名前を入れない時間を見て作ってみてください。
その枠には、「調整時間」と書きます。
予定外の仕事が入れば、その対応に使う。
遅れている仕事があれば、元に戻す。
何も起きなければ、資料の見直しや翌日の準備に使う。
私も、空いている時間を見ると仕事を入れたくなりました。
しかし、そこを埋めずに残してみると、一つ予定外が入っても慌てることが減りました。
相談を後回しにせず、相手の話も聞けるようになりました。
報告も雑にせず、必要な内容を伝えられるようになりました。
仕事が減ったわけではありません。
余白が、それまで学んだ仕事の進め方を守ってくれたのです。
次回予告:一日は崩れなくなった。それでも、成果は伸びていなかった
予定の中に余白を入れるようになってから、急な仕事に振り回されることは少しずつ減りました。
一つ予定が崩れても、その日のうちに立て直せる。
退勤時間が近づいても、以前ほど焦らなくなりました。
「これで、仕事を安定して進められる。」
私はそう思っていました。
しかし、また新しい疑問が生まれます。
予定どおりに仕事は終わっている。
急な仕事にも対応できている。
それなのに、
「目の前の仕事を処理しているだけで、本当に成果は伸びているのだろうか。」
そんな違和感が残っていたのです。
ある日、最高評価者の机を見ると、その人は空いた時間に今日の仕事をしていませんでした。
- 来週の予定
- 周囲の進み具合
- 今後予想される問題
机の上に資料を広げ、仕事全体を静かに見渡していたのです。
余白は、一日を崩さないためだけの時間ではありませんでした。
最高評価者は、その時間を使って、目の前ではなく仕事全体を見ていたのです。
次回、
『目の前の仕事だけでは成果は伸びない。最高評価者は仕事全体を先に設計していた』
をお届けします。
お楽しみにどうぞ!


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