前回の記事では、計画を立てたら終わりではなく、仕事の途中で、
「今、予定していた場所にいるか?」
と現在地を確認することを知りました。
(※前回の記事はこちら→【18話】『計画を立てただけでは仕事は進まない。最高評価者は「途中」で現在地を確認していた』)
それから私は、締切直前になって初めて遅れに気づくことが減りました。
「早く気づけば、まだ取り戻せる。」
すると確かに以前より、仕事は安定しました。
週の途中で予定表を見る。
少し遅れている。
でも、まだ時間はある。
ところが……。
なんだか妙なことに気づきます。
遅れには早く気づけるようになった。
予定へ戻すこともできている。
それなのに私は、
また同じような場所で遅れていたのです。
遅れには気づけた。それなのに、なぜかまた遅れてしまった。
ある日の午前中。
予定表と実際の進み具合を見比べると、予定より1時間ほど遅れていました。
以前なら、夕方まで気づかなかったかもしれません。
「よし。今回は早く気づけた。」
まだ時間はあります。
私はすぐに遅れを取り戻そうとしました。
昼休み。
家で作ったおにぎりを机で食べながら、資料を開く。
午後に確保していた調整時間も使う。
いつもより少し速くマウスを動かす。
夕方には、なんとか予定していたところまで戻すことができました。
「やっぱり、早く気づけば何とかなるな。」
少し安心しました。
ところが数日後。
別の仕事でも、また予定より遅れていました。
時計を見る。
そして、ほとんど反射的に思いました。
「また取り戻せばいい。」
このときの私は、まだ気づいていませんでした。
遅れを見つけるたびに、自分の時間と頑張りで帳尻を合わせていただけだったことに。
失った1時間を、力ずくで取り戻していた。
- 遅れれば、速く作業する。
- 足りなければ、調整時間を使う。
- それでも足りなければ、自分の時間を削る。
私の中では、
「仕事が遅れた」と「自分の頑張りが足りなかった」が、いつの間にか同じ意味になっていました。
だから答えも、いつも同じです。
もっと集中する。
もっと速くやる。
もう少し時間を使う。
確かに、それで予定へ戻れることはありました。
でも、予定へ戻るたびに調整時間は消えていきます。
第16話で守るようになった余白まで、いつの間にか、
遅れを取り戻すための時間になっていました。
そして、もう一つ。
私は大事なことを見落としていました。
予定表の上では元へ戻っていました。
でも、仕事が遅れた原因まで消えたわけではありませんでした。
だから、しばらくするとまた遅れる。
そして私は、また頑張って取り戻す。
「なんか、おかしいな……。」
早く気づけるようになった。
予定にも戻せている。
なのに、働き方は少しも楽になっていません。
むしろ、
「遅れても、自分が頑張れば何とかなる。」
という今までとは違う働き方に変わっただけでした。
「またか……」同じ場所で、仕事が止まった。
翌日。
私は別の資料を作っていました。
途中までは順調です。
ところが、必要なデータを確認しようとしたところで手が止まりました。
「あれ……どこだ?」
フォルダを開く。
ない。
閉じる。
別のフォルダを開く。
検索する。
メールをさかのぼる。
また別のフォルダを開く。
気づけば二十分近く経っていました。
ようやくデータを見つけたとき、私はマウスから手を離しました。
「……またか。」
前の仕事でも、似たようなことを思い出しました。
- 必要な資料を探す。
- 見つからない。
- 時間が過ぎる。
- 予定より遅れる。
そして私は、
「取り戻さなきゃ。」
と作業速度を上げる。
そこで初めて、違和感の正体が見えました。
「俺、ずっと同じことを繰り返してないか……?」
前回は、1時間の遅れを取り戻すことしか考えていませんでした。
でも、
何がその1時間を奪ったのか。
そこは、一度も見ていなかったのです。
彼は急がなかった。まず、止まった場所を見ていた。
それから数日後。
午後、席を立ったときでした。
少し離れたところで、最高評価者が予定表を開いているのが目に入りました。
何気なく画面を見ると、予定していた位置より、実際の仕事が少し遅れています。
「あれ?」
私は少し意外に思いました。
最高評価者でも、予定より遅れることがある。
でも、もっと意外だったのはその後でした。
急いで作業へ戻るのかと思ったら、そうではありません。
予定表と、それまでの作業記録を交互に見ています。
画面をスクロールしては止める。
少し戻す。
また予定表を見る。
私は気になって声をかけました。
「予定より遅れてるんですか?」
「はい。少し遅れてますね。」
「じゃあ、今から取り戻すんですか?」
そう聞くと、最高評価者は画面を見たまま答えました。
「その前に、どこから遅れたのかを見てます。」
「え?どこから遅れたかを確認するんですか?」
「はい。遅れた時間だけ見ても、原因は分からないので。」
最高評価者は、自分の予定表を指さしました。
「ここまでは予定どおりなんです。」
画面には、午前中の予定が並んでいます。
「でも、この作業から少しずつズレ始めてます。」
その人は、自分の作業記録をもう一度確認しました。
「このとき、確認に思ったより時間がかかってますね。」
私は聞きました。
「でも、原因を調べてる間にも時間は過ぎますよね?」
「そうですね。」
最高評価者は一度うなずきました。
「でも、同じ原因が残っていたら、急いで取り戻してもまた止まりますから。」
その言葉を聞いた瞬間。
私は何も言えなくなりました。
――また止まる。
頭に浮かんだのは、さっきまで見ていた最高評価者の予定表ではありませんでした。
自分の仕事です。
資料を探す。
見つからない。
時間が過ぎる。
遅れに気づく。
慌てて取り戻す。
そして数日後、また同じような場所で遅れる。
「あ……。」
私は自分の席へ戻り、予定表を開きました。
1時間遅れた。
そこばかり見ていた画面を、今度は少し前までさかのぼってみます。
午前10時までは予定どおり。
その後から、少しずつズレている。
「このとき、俺は何してた……?」
思い返しました。
「資料を探してたんだ……。」
そこで、ようやく気づきました。
私はこれまで、遅れた時間ばかりを見ていた。
でも最高評価者が見ていたのは、そこではありませんでした。
何が仕事を止めたのかを、先に見ていたのです。
1時間遅れたことより、その1時間を生んだもの。
私はこれまで、
「1時間遅れている。」
という結果ばかり見ていました。
だから、
「1時間取り戻そう。」
と考えていた。
でも、本当に見るべきなのは、その前でした。
- 資料を探していたのか。
- 判断に迷っていたのか。
- 誰かの返事を待っていたのか。
- やり直しが発生していたのか。
- そもそも最初の見積もりが甘かったのか。
同じ1時間の遅れでも、その原因はまったく違います。
それなのに私は、最初に決めた予定へ戻すことばかり考えていました。
- 計画したんだから、その通りにやらなければならない。
- 遅れたんだから、自分が頑張って取り戻さなければならない。
でも、その考えにしがみついている限り、私は同じ場所で何度でも止まります。
大切なのは、遅れた自分を責めることではありませんでした。
取り戻そうとする前に、一度だけ手を止める。
そして、
「どこで止まった?」
と見る。
遅れを取り戻すのは、その後でよかったのです。
昨日まで見えていなかったものが、今日は見えた。
次の事でも、予定より少し遅れました。
いつもの私なら、
「30分取り戻そう。」
と、すぐに作業速度を上げていたと思います。
でも今回は、一度手を止めました。
予定表を見る。
午前11時までは予定どおり。
そこから遅れています。
「そのとき、何をしていた?」
思い返すと、また必要な資料を探していました。
私はメモへ一行だけ書きました。
「資料探し 25分」
それだけです。
遅れがなくなったわけではありません。
失った25分が戻ってきたわけでもありません。
それでも、不思議と昨日までとは違いました。
これまでなら、
「今日も仕事が遅かった。」
で終わっていた。
でも今日は、
「資料を探していたところで25分止まった。」
と分かっている。
同じ25分の遅れなのに、見えているものがまるで違いました。
「俺が遅いんじゃなかったんだ。……ここで止まってたのか。」
その瞬間、私の中で何かが少し変わりました。
仕事が遅れたとき、「もっと頑張る」以外にも、見る場所があったのです。
今日、遅れた時間ではなく「止まった場所」を一つだけ見る。
もし今日、予定より仕事が遅れたら、
「もっと頑張らなきゃ。」
と考える前に、一度だけ手を止めてみてください。
難しい分析は必要ありません。
1つだけです。
「今日は、どこで止まった?」
例えば、
- 資料探し 20分
- 判断に迷った 15分
- 返事待ち 30分
それだけで構いません。
改善方法まで考えなくていい。
反省する必要もありません。
まず、遅れという結果ではなく、何が仕事を止めたのかを見る。
昨日まで、
「今日も仕事が遅かった。」
としか見えていなかった1日が、
「ここで20分止まっていた。」
へ変わる。
それだけでも、仕事の見え方は変わります。
そして私はここで初めて、
仕事が遅れたときに必要なのは、
頑張る量を増やすことだけではないと知りました。
次回予告:原因は見えた。でも、それだけでは何も変わらなかった…
それから私は、仕事が遅れたとき、
「どこで止まった?」
を見るようになりました。
- 資料を探していた。
- 判断に迷っていた。
- 確認を待っていた。
以前なら、
「自分の頑張りが足りなかった。」
で終わっていたものに、少しずつ具体的な原因が見えるようになりました。
「なるほど。だから遅れていたのか。」
原因が分かるだけでも、仕事の見え方は変わりました。
しかし……。
数日後。
私は自分のメモを見返していました。
そこには、「資料探し 20分」と書かれています。
前にも書いた言葉でした。
そして今日も、同じ理由で仕事が止まっていました。
「原因は分かってる。」
私はその文字を見つめました。
「なのに……なんでまた同じことが起きてるんだ?」
原因が見えることと、
同じ問題が起きなくなることは、
どうやら別の話でした。
私はメモを見つめたまま、心の中でつぶやきました。
「原因が分かったら……次は何を変える?」
第20話へ続きます…。
次回も楽しみに!


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